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Artist

BIGGIE TEMBO

Title

OUT OF AFRICA


biggie
Japanese Title

アウト・オブ・アフリカ

Date 1992
Label COOKING VINYL COCY75967(JP)
CD Release 1994
Rating ★★★★
Availability ◆◆


Review

 ブンドゥ・ボーイズを聴きながら、かれらのことを書いているうちに、ブンドゥ・ボーイズはやっぱりビッギー・テンポで保っていたことをあらためて実感した。そのビッギーもWEAからのセカンド・アルバム"PAMBERI!"(WEA WMC5-63(JP))を発表後、90年にバンドを脱退。
 
 ショナの伝統をふまえながら、シンセやホーンをとりいれた意欲作で日本でも高い評価を受けた(『ミュージック・マガジン』1990年ベスト・アルバム、アフリカ部門第2位!)が、セールス的には失敗だったようで、そのことが直接のひきがねになったとも。そして、ソロになったビッギーがまもなく発表したアルバムが本盤。タイトルがあらわすとおり、アフリカ的な伝統に立脚しながら、世界へ飛び出していこうというビッギーの意気込みが感じられる快作である。
 
 ビッギーが得意とした軽快ではちきれんばかりの、ストレートだが複雑なリズムを刻むジット・サウンドに、ホーン・セクションが加わることで、サウンドに丸みと広がりが生まれている。ジンバブウェ時代に感じられたトゲトゲしさというか、青春の痛々しさみたいなものが影をひそめ、おおらかでやさしくなった印象を受ける。なかでも、南アフリカの介入にたいするモザンビークの戦いを歌にした5曲目「モザンビーク」でのコーラスとホーン・セクションの使い方はブンドゥ時代にはなかったものだ。
 
 こんなにもカラッとしてさわやかなのに、ビッギーの歌と叫びにはなぜか切なさと暗さがつきまとっている。でも、それこそがビッギーの魅力であり、ブンドゥの魅力であったのだと思う。マプフーモの暗さが地を這うような暗さとすれば、ビッギーのそれは中空へ飛び立ち消え入るはかない暗さだ。個人的にはブンドゥ名義の"PAMBERI!"より気に入っている。
 その後、ビッギーは音楽とコメディを合体させた新しい試みをおこなうもうまくいかなかった。かれの心は徐々にむしばまれていき、1995年7月30日、首吊り自殺をした。享年37歳。
 
 ビッギーが生前に残したソロ・アルバムは本盤のみで、現在では、残念ながら発売元のクッキング・ヴァイナルのカタログからも消えている。ただ、生前、ビッギーがスタートルド・インセクツというブリストル出身のグループとコラボレートした"SKIN"というアルバムが、先ごろSECOND SIGHTというイギリスのマイナー・レーベルから発売された。MP3でサンプルを聴いたかぎりでは、オルタナ系アフリカン・ポップとでもいうべきか。ビッギーのイメージからは想像できない奇妙なサウンドである。


(3.13.02)



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by Tatsushi Tsukahara